電球換えたついでに始めたブログ

面倒くさがりな僕が1年ぶりに電球を替えたついでに始めたブログ。

電球#231 矛盾の塔

私は、思えば鬱なのであろう。

これはやたらと他人に弱みを見せ

自分に気を引きたいだけの

無礼な者たちとは違うと思いたいのだが。

自分がそう言ったところで、

ここには私しか

いないのだからそれを判断できるのは

私ではない誰かであり、ついぞわからない。

 

久しい休日に、

購入した新書でも読もうと

意気込んで寝たはいいが、

起きてからも夢の中で

酒の抜けない体を引きずっては

夢幻の世界から頭を起すには至っていなかった。

ついには日も落ち始め、

今日という一日を無駄にしたことを

確認しつつもまだ夢幻をさまよっている。

 

思えば自分がやりたいと思ったことを

立派にやれた日はなく、

触りだけで今日は時間がないと諦め

埃を積み上げるだけの日々のようにも感じる。

 

気分が落ち込むときの自分はこうであり、

これが鬱ではないかと思う原因ではあるが、

先にも書いた通り、ここには私しかいない。

されども私が鬱だと思うのならば鬱なのだろうが。

それを判断できるのは私ではない。

これも謎のままである。

 

やろうやろうと思うことが

積み重なり、塔のように感じることがある。

その塔は遥か雲より上の頂点にある目から

私を見下ろし、私に要求するのである。

「今日は何をやるのだ」と。

私にはやりたいことをやるだけの

若さと時間と身分がある。

金はないが。

何を焦る必要があるのだろうか。

いいや、あるのだ。

積み上がった塔はいつも何をするでも

私を見下ろし、常に得も言えない

圧力を私にかけてくる。

その圧力の大きなことか。

気を抜けば圧力に手足を押さえつけられ、

右に左にと体を振られ、

ついには何もできなくなってしまう。

 

今日も塔が語り掛けてくる、

本を読むのではないか。

ゲームはしないのか?

文字を書かないのか?

借家の更新料の支払いはいつ終わるのだ?

読みかけの本から読めや

連絡しないといけないことはなかったか?

買い物にも行かなくてはいけない。

春に袖を通す服はまだ買わないのか。

いや、今ある服を捨ててからだろう。

ゴミの日を忘れないようにしないと。

段ボールはいつ捨てるんだ?

まとめるための麻ひもが用意できてからだ。

麻ひもはどこに売ってるんだ?

調べたことが無いからわからない。

早く調べろ。

WEB小説も読みたい。

買った本も読まなくては。

借りているマンガもあるだろう?

春休みに行く小旅行はどうなった?

クリアしてからほったらかしてるゲームは?

トロコンするのではないか?

映画の感想はまだ書かないのか?

バイトのシフトはどうする?

そんなことより研究室は?

TOEICの申し込みは?

 

やりたいこととやらなければいけないことが

混じり歪ながらにも高く伸びた塔だが、

不思議なことに夜の帳とともに降りてくる。

 

私の目線よりも低くなった塔は

とたん、「明日があるさ」と

私を慰め、立て直そうとする。

昼の高圧な態度とは真反対に、

私のそばに立ち理解を示すような、

上目遣いで味方であることを訴えてくる。

矛盾の塔は私が酒を飲むのを助け、

存在を忘れさせる。

夜の世界だけが僕を自由にする。

 

目が覚めるとそこには私よりも遥かに

大きく圧力を持った塔が待ち構えている。

そして私のつむじに向けて言うのだ。

「今日は何をやるのだ」と。

 

私にはわかるのだ、

この矛盾の塔が私を生かしているのだと。

 

やりたいことがあることは喜ばしく

挫折は心を殺す。

高く積みあがった塔は消化されることを望みつつも

心が折れたときにはともに消滅してしまうことを

知っている。

”やりたいこと”が”できないこと”だった時

私はどうするのだろうか。

 

諦めるのだろうか。

 

 

今日も自分の周りにやりたいを積み重ね

やれないことに価値を見出し、

やらないといけないことが自分を隠す。

 

そんな矛盾が私を取り巻く。

 

思えばこうやって字を書きだしたのも

何もしていない自分でも肯定したいと感じる

矛盾が始めたことなのだろう。

 

私は言ってしまえば字を書くこと以外は

何もしていないのだ。

何もしていない日々の締めくくりに

一日を思い返し筆を執ることで

何かしていたような気持になることを

味わいたかったのだろう。

 

僕の文は言い訳である。

 

世界への言い訳である。

何もなかった、何もやらなかった日の最後に、

僕はこれを書くために今日を生きましたと

世界に言い訳するための文章なのだ。

 

僕の右目側にある窓から世界が陰るのが見える。

部屋に入る太陽は少なくなり

ライトをつける羽目になる。

 

夜が始まる。

言い訳の夜が始まる。