電球#216 子猫とハンバーグ
「おなかすいたな~」
晩御飯を食べようと大学の食堂まで
自転車を漕ぐ。
家から学校までの道は車も通る道で
夜に走るときは油断ならない。
大学直前の真っ暗でまっすぐな道に入るとき
真っ赤な車な車が止まっていることが
印象に残っている。
早く飯を食いたい一心でペダルを回していると、
一匹の白猫が道を渡ろうとしていた。
危ないよ~
と口笛を吹いて存在を知らせると
こっちを向いて白猫は動きを止めた。
それも一瞬のことでプイっとまた道を渡ろうとする。
その時初めてそれに気づいた。
1mくらい近づいて初めて分かった。
セブンイレブンのだろうか、
茶色いごみ袋が落ちていた。
ゴミ袋は動いていた。
ピクピクと風に吹かれるように
ゴミ袋の耳が動いていた。
動いていないと気づかなかったと思う。
それくらいにくらい道だった。
何かがおかしい。
違和感に気づいたのは、
数瞬後、すぐのこと。
ゴミ袋は猫だった。
身体を二つに折り曲げられ、
今にも死にそうな子猫だった。
動いていたのは、
子猫の足だった。
瞬間理解した。
道を渡ろうとした白猫は
子猫の親だったんだろう。
子猫は車にでも轢かれたのか、
親猫は子猫を心配して身を寄せようとしていたんだろう。
気づけば食堂に到着していた。
小さな命の散り際を目撃し複雑な気持ちだった
にもかかわらず、その日頼んだハンバーグは
いつも通りおいしかった。